Leeum/ジャン・ヌーベル

今日は、ジャン・ヌーベルの手がけたミュージアム2の紹介をします。
コーンの吹抜けのロビーから、無機質なステンレスのエレベータに乗り2階展示室へ。広い空間のなかに、黒い門型のボックスが不規則な角度で散在している。このボックスは、独立した展示空間になっており、ボックス同士の隙間はガラスが嵌め込まれている。これらのボックスは建物の内外を貫通しており、内観でありながら外観なのだ。ジャン・ヌーベルはリウムのDVDの中で、「ボックスは固定空間であり、複雑で幾何学的な形態を呈し、互いに別の方向を見つめている。内部では展示物の性質によって壁や臨時の仮設物を用い空間の概念を完全に変えることが可能だ。」と語っている。先ごろ完成した、ケ・ブランリー美術館でも、同様の形式が試みられている。展示ボックスの門型の見付は壁よりも天井が厚い。天井には、幾つものフレームレスパネルがあり、作品のサイズや種類によって必要なパネルが跳ね上げられ、照明が顔を出す仕組みになっており、また、天井周囲の折上げ部分には空調レターンなどの設備が隠されているようだ。
ガラス越しに、ステンレスバーのケージで包まれた岩石の壁が立ちはだかっている。これら岩石は、土を掘削した際に出土したものをさらに細かく砕いたもの。工事の過程で偶然に生まれた亀裂、ときにそれは文明が大地につけた傷跡であり、建築とは痛みの記憶であるとし、地盤の埋め戻しを行わず、人工の岩石壁を大地の痕跡として残した。レム・コールハースの語る『自然と人工物の併存』と何か通ずるものがある。岩石壁と建物の隙間から光が差し込み、自然な緑を垣間見るとき、ここが地中であると同時に、人工的な空間であることを実感する。
展示室全体の天井は、電気・空調設備など表しで、スチールパイプのグリッドとともに黒く塗装されている。天井は外壁をまたぎ外部まで延びて庇となり、無柱空間であることからして、巨大な1枚の屋根だと気づく。これまでもジャン・ヌーベルは、ルツェルン文化会議センターやレイナ・ソフィアで、幾つかの機能をもつ建物を一様に覆う、巨大なウィングと呼ばれる大屋根を架けた。ありえないほどのウィングの深さ(長さ)は、そこに内部でも外部でもない特別な空間を宿す。そして、磨き上げられたウィングの軒天に映りこむ都市、緑、空、人あるいは幻影が、未来を予感させる。但し、今回はウィングの張り出しは最小で、軒天のお化粧もなく空が透けて見えることから、展示室を無柱空間とするため、構造上の理由で用いられただけなのかもしれない。
床は、10センチ角のMDFのような木目のない薄茶色のブロック。開口部の方立は、マットな鈍い黒色で、亜鉛溶融メッキの上、リン酸被膜処理されたスチールかと思われる。階段室の内部の金属板は鈍く光る黒色を呈している。金属板の厚さは4ミリほどなので、内外同一素材か定かではないが、外部には酸化処理したステンレス・スチールが、その美しさと耐久性を実証するため研究が行われた上で、実験的に用いられたらしい。
各階への移動は階段となる。最小限の光の中で、僅かに金色を帯びた金属板の壁、天井や踏板、壁に埋め込まれた手摺りと照明、フロアサイン、その空間から部分に至るまで、とても洗練されていて美しい。以前、ボルドーにあるホテルSt.ジェームズに宿泊した際、室内の家具やオーディオ、サニタリーのアクセサリーといった、かなり細かい部分の形や質感さえも建築と等価に扱われ、吟味されているように感じた。ちなみに、ミュージアム2の化粧室は、便器、ペーパーホルダー、手摺り、洗面器、全てがステンレス製の『FRANK』というブランドで統一されている。
OMAの連続する展示空間とは異なり、ジャン・ヌーベルの空間は、階段を下りるたびにリセットされてゆくように感じる。同じ天高をもつ1、2階の展示室から地階へ移動すると、こちらは一部が2層分吹抜けており、その分、展示ボックスも縦長で巨大になる。写真で見ると、スケール感が湧かないかもしれないが、とてもダイナミックで、開放的な空間。1階からも見下ろせるが、地階から見上げる方が、地底を体感できて圧倒的に面白い。
地階展示室の奥に、ダミアン・ハーストの『死のダンス』という作品が展示されている。遠目でみると、カラフルな色のミニカーでもガラスケースに陳列されているように見えるが、近づくにつれ、それが全て種類や形の異なる錠剤だと分かり、どきっとする。「抽象化された外観が、実は人間の欲望を満たすための錠剤であることを知った瞬間、生に対する人間の執着と死の不可避性に気づくという作品。ホルマリン漬けの牛でも有名なハースト。生と死をテーマにした彼のセンセーショナルな作品に対し、残酷さへの批判や非難もあるようだ・・・」と作品に近づくと、このような解説が日本語でPDAから聴こえる。余談であるが、混雑した美術館でこんなサービスがあれば大助かり。日本でも、ポーラ美術館で実施されていたが、もっと広く浸透してほしいものだ。




























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