Leeum/OMA

夜中11時頃ソウルに到着。鐘路の繁華街をうろうろし、焼肉屋でカルビと蟹、付け合せのキムチやスープなどをたらふく食べ、オンドル部屋に宿泊。満腹な上、オンドルのあまりの熱さに熟睡できないまま、朝8時に起床。ソウルのTVでもNHKの番組が放送されていたので、いつものように『芋たこなんきん』を見ながら着替え、9時前に出発。宿の近くに御粥屋があったはずと、キョロキョロしていると、おじさんたちが皆、一様にどんぶりを食べている店を発見。ここかな?と入ってみると、そこは、ソウルで知らない人はいないと言われる『ヘジャンク』の名店だった。二日酔いの妙薬として知られるヘジャンクは漢字で『解腸湯』と書く。牛モツと牛の血を固めたものを煮込んだスープで、見た目のグロテスクさに比べると、薄味で油っこくないし、生臭さもなくて、とても美味しく、そのうえ5000ウォンという安さ。やみつきになった我々は、ソウルを発つまでの毎日、この店に通うことになる。
ソウルの地下鉄はとても分かりやすく、宿のある鐘閣から、サムスン美術館『リウム』のある漢江鎮までの、2回の乗換えもスムーズで、開館の10時過ぎに到着した。漢江鎮付近は、外国人が多く住む高級住宅街。グランドハイアットホテルがあるせいか日本人も見かけたが、ソウル中心部とは異なり人影はまばら。自然の残る南山から、漢江川を見下ろす視界を妨げないよう、リウムの建築は低層におさえられている。
リウムは、完全予約制。カウンターで名前を告げ、チケットとデジタルガイドのPDA(サムスン電子製)を受け取った。リウムはご存知の通り、児童教育文化センター(企画展示空間)はOMA、ミュージアム1(古美術品の展示空間)はマリオ・ボッタ、ミュージアム2(現代アートの展示空間)はジャン・ヌーベルというように、3人の建築家が設計した美術館だ。今日は、見所満載の児童教育文化センターからご紹介したい。
漢江鎮駅から大通りを歩き、交番を過ぎたあたりにリウムのサインが立っている。そこの角を右折し坂を上がっていくと、道なりに巨大なガラスの建築が現れる。ガラスを覗いてみるとそこは駐車場。ほどなく入口とおぼしき場所があり係員が立っている。数字をかたどったLEDがエントランスのスロープに散りばめられランダムに点滅している。直島の角屋でもお馴染み、宮島達男氏の作品だ。ロビーへと緩やかにつながるスロープは床、壁、天井がウッドデッキで覆われ、それらはすでに色落ちしている。雨ざらしでない箇所は茶褐色を呈しているためエイジングしたことが分かる。
児童教育文化センターには、ロビーを折り返し地点として、エントランスのスロープと平行に往復し下るかたちでアクセスする。3つの美術館の共通点は、スロープや階段の手摺りがどれも壁に埋め込まれ、木製で丸みを帯び、スベスベして手触りがいいこと。子供にはやや高すぎる位置なので、おそらく大人(高齢者)用なのだろう。
建物の内部には、『ブラックボックス』と呼ばれるもう1つの建物が浮んでいる。レム・コールハースはリウムのDVDの中で、「ブラックボックスは完全な独立体で人工的な空間。周囲の影響を受け付けないし、光も入らない。人の操作によってのみ調整でき、外部世界とは隔絶された空間。ブラックボックスとは本来そんなもので、ブラックボックスとともに掘削した空間が併在し、完全な人工と自然的要素によって弁証法的関係が成立し得る」と語った。
チケットカウンターと正対してブラックボックスへの階段がある。GA DOCUMENTの写真では、上部のコンクリート塊の輪郭をなぞるように、階段もエッジ状に手前で狭まるデザインになっているが、現在は階段幅が同じになるよう左側に増設されていた。明らかに後付けしたと分かる作り方。日本も韓国もデザインより安全重視か。。。いよいよ、ブラックボックスの内部へ。真っ暗な殻の中といった感じで、天井はパンチングの折坂、床はカーサ・ダ・ムジカ同様、アルミ板。ただし、こちらは長方形で、天井の折坂のラインと同方向に、内部へと誘引するように斜めに貼られている。入って右側には映像スクリーンと可動席があり、カーサ・ダ・ムジカの最上階にある段々の空間を思い出す。
この日は水墨画展が催されていたが、オープン時はリウムの建築家3人による展覧会が行われたらしい。OMAの空間は、常設ではなく企画展示用であるためだと思うが、他の2人の建築家のものと明らかに異なるのは、展示内容が変わるたびに展示パネルのデザインも変わることだ。ブラックボックス、その上部、その下部という3つの空間はがらんどうで、展示物のサイズも種類も選ばない。おそらく、新しい企画展の際、そのクリエーターは、OMAの空間に影響を受けつつも果敢に挑んでいるのだろう。その相乗効果もこの建築の魅力かもしれない。
一人用の極細エスカレーターがブラックボックスを地下2階、地下1階へと放射状に貫いている。上り下りの際に出くわす外部の光や風景によって、ブラックボックスが上部と下部空間を定義付けていることを改めて実感する。残念なのは、アクセス用スロープのガラス手摺りに目隠しフィルム(不透明)が貼られてしまっていること。このダイナミックな空間のなかで、女性のスカートの中を重視する奴なんているのか?と思ってしまう。せめて光だけは透す手立てがあったはず。
ブラックボックスの上部が明るいのは、オフィス階にあるガラスのパティオからの採光のおかげだ。外壁ラインをはみ出すガラスのパティオは、外部であり、内部でもある不思議な領域となっている。何故、鉄骨の梁がガラスケースの中に?これも展示物の一種なのかと思ったら、パティオを構成する部材だった。耐火被覆は、梁の内側だけ(これでいいのかな・・・)に施されているため、ガラス越しに梁の接合ボルトまでしっかり見ることができる。外部は、ガラスで覆われた梁の下部と入れ子状に、ガラスの嵌め込まれたフレームが、道路やスロープといったグランドレベルの勾配を再定義するように建物を一周し、さらに三角平面の管理用階段脇でガラスレスのフレームになって屋外デッキへとフェードアウトする。上から見ると大きく『の』の字を描いており、建物内外をサーキュレートしているみたいだ。
児童教育文化センター前には散策路兼思索空間の屋外デッキがある。先ほどの駐車場の上に位置し、丸太のような巨大な手摺りで囲われている。デッキには、六本木ヒルズでもお馴染みのルイーズ・ブルジョワの作品、巨大蜘蛛の親子が展示されている。日が暮れるのを待ったが、とうとう巨大蜘蛛の親子がライトアップされることはなかった。三角平面の管理用階段の裏側も赤く照らされるはずなのに、残念。エントランスのスロープのLEDがガラスに映りこみ、さらに賑やかに点滅を繰り返すのを見届けて、リウムを後にした。







































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