書評「ビルディングタイプの解剖学」

建築学科を出た人なら、近代建築(モダンアーキテクチュア)という言葉には、深い親しみがあると思います。
アバンギャルドとしてのコルビュジェやミースを思い出す人もいれば、卒業旅行の巡礼地として、むしろ古典的なものとして思い出す人もいるかと思います。
近代の歴史性を排除するような抽象的な思考が限界に達して、ポストモダンの時代へ・・・云々・・・。というのが、私が学生時代に受けた授業での内容でした。
でも、近代という時代が、新しい技術を用いて世界のどこでも均質なものを生み出すという、抽象化あるいは一般化という思考がベースにあったとすれば、ポストモダンにおける歴史性や風土性までもデザインに取り込もうとする潮流、別の言い方をすれば、歴史という本来は普遍化が困難な特殊なものですら一般化してしまおうという潮流こそ、近代の正当な嫡出子とも言えるのです。
この意味で、ポストモダンを経てモダン化は完了した
そして、この文脈にこそ、私は興味があります。

しかし、抽象化や一般化を捨てて、特殊なものに挑むのは、ことに建築においては、並大抵のことではありません。そもそも建築生産に用いられる図面こそ、抽象化の別名というべきものなのですから。

ということで、「一般化VS特殊化」という構図は、一生かかって吟味すべきような深い内容ですが、近代が一般化というシステムを如何に稼動、そして作動させたのかを垣間見せてくれる、興味深い本に出会いました。
五十嵐太郎さんの「ビルディングタイプの解剖学」という本です。

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学校や病院、あるいは工場といったビルディングタイプに埋め込まれた、徹底した管理という理念。それら理念の建築への忠実な実践。その結果、建物に行き渡る冷徹なまでの透明性。
建築史という枠組みを通して、社会や思想の背景までも透かし見える本書は、建築専門外の方々にもお薦めできる一冊です。
師走の慌しい街並み。街並みを形作る数々のビルディング。
それらを見る目にも、本書を一読すれば何らかの変化が起こるものと思います。

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